2025年1月取材
第2回
フラワースタジオ・エス合同会社 CEO
猪本 健太郎さん
熊本県熊本市出身。
元プロ野球選手。2008年~2017年、福岡ソフトバンクホークス、千葉ロッテマリーンズで、捕手・内野手として活躍。現役引退後はホークスのブルペン捕手としてチームに貢献。
2023年に退団し、2024年、「フラワースタジオ・エス合同会社」を設立。
同年9月1日に同市中央区薬院に「FLOWER STUDIO S」をオープン。3児の父として、家事、育児にも奮闘中。
僕の実家は魚屋、妻の実家は宮崎で花屋を経営していて、いつか自分たちもお店の経営をしたいねという話はしていたんです。実は、僕の母方の祖父も花屋だったんですが、その影響か、僕も小さい頃からお花が好きで、花図鑑を買ったり、アマリリスを育てたりしてました。
花屋って、人の喜びや悲しみとかいろんな場面に関われる素敵な仕事だなって思っていましたし、違う角度から野球を応援したいと考えたんです。球団の方々も驚いていましたけど、「頑張れよ!」って送り出してくれました。オープンしてからはホークスの仲間がたくさん来店してくれて、本当に嬉しかったですし、昨年11月の和田さん(元ホークスの投手、和田毅さん)の引退会見の際にお花を準備させていただいた時も、心から「幸せやなぁ」って思いました。
「小さい頃はお花が好きと言えなかった」と笑う
お花に関しては妻が先輩なので見習いながらやっていますけど、難しいですね。開業前に1年かけて勉強したんですけど、お花の種類だけでも多いじゃないですか。野球のサインのレベルじゃないです(笑)。お花の扱い方やアレンジの仕方なども、まだまだ勉強中。小さな作品から壁への生け込みまで、いろんなことにチャレンジしています。
「プロポーズがうまくいきますように」
108本のバラには猪本さんの想いもこもっている
そして、やっぱりいい仕事です!プロ野球もファンのためにっていうところが絶対にありますけど、花屋もお客様に喜んでいただくことが一番。プロポーズの花束の注文を受けた時とかは、その方の人生の大きな節目に絡むことができると思うと、その瞬間から嬉しい。男の子もちょっと恥ずかしがりながら来るわけじゃないですか。「プロポーズ、うまくいけよ!!」と念じながら花束を作っています。「彼女さんはきっとこんな女性で」とプロポーズのシーンを思い浮かべたり、「あいつシャイやし、なんかアドバイスできたらな」なんて考えたりしています。
すべてにおいてですね。僕には「野球しかやってこなかった」って言われる部分と、「野球をやってきたから出来る」って思える二つの面がある。社会のルールは野球の世界とはまた違うので、そこは自分なりに一生懸命勉強していかなきゃいけないと思っています。でも、野球生活で得たことは僕にとっての財産です。プロ野球では、毎年100人単位で戦力外を通達されますけど、野球選手のセカンドキャリアはそれぞれ。あの経験があれば、なんでもできると思う。僕も自信を持って、自分の目指す道を進んでいきたいなって思います。
大きな手と優しいまなざしが印象的
人と接するようにお花と向き合う
福岡市の「一人一花運動」(※現在は福岡県とも連携)に、とても共感しています。一人一花と言わず、「地球が花であふれかえるくらいになればいい」と思っています。まずは、男性や若い方に興味を持ってもらうところからかな。特に男性って、ちょっとお花に遠いイメージがあるじゃないですか。昨年末、野球教室に花を提供して、野球少年たちに「ありがとうのお花を1輪」という企画をやったんです。野球を通しての「花育」ですかね。「男の子でもお花を好きになっていいんだよ」「プレゼントしていいんだよ」っていう空気が出来てくれば、お花の世界も盛り上がるでしょ、それがひとつの目標です。
僕は、お花は絶対になくならないと思ってるんです。ふと口ずさむ歌にもお花の名前が出てくるくらい、生活の至るところに根付いているし、癒しにもなる。もちろん、僕も癒されている一人です。だから道路沿いにももっとお花が増えたらいいなと。そのために、お花の良さを自分なりに表現していきたいと思っています。
「友達」ですかね。朝はお花たちと朝礼から始めます(笑)。「おはよう!」「いい顔してるな」って声をかけるんです。「こいつ」とか「この子可愛い」とか、自分の中で勝手に性別まで付けてます。ダリアの黒蝶(コクチョウ)っていう品種は、攻撃的なたたずまいで「男やな~」って思うし、モクレンはちょっと白髪頭の「イケおじ」。名前が覚えにくい花には、「ポンポン」とかニックネームを付けてますよ。
もう一つ!「お花は世界をつなぐメッセージ」です。花には花言葉があるし、モクレンのように春の訪れを告げる花もあるでしょう。お花一つにメッセージ性やストーリー性があるって、独特の魅力ですよね。
お花に囲まれて満面の笑み。
後ろにはお花で作った大きな野球ボールも
やっぱり、バラですね。綺麗で素敵。バラは素敵な女性です(笑)。
一見、怖そうに見えますけど、温かい人です。ホークスの先輩は、「花咲か爺さん」って言ってくださいました。「みんなに幸せを与える人」という意味だそうです。とにかく前向きで「何があっても、まぁ大丈夫っしょ!」って、どっしりしています。実は、このお店は私の母のもとでやっていく予定だったんです。母は1級フラワー装飾技能士の有資格者で、経営のノウハウも持っているので心強かったんですが、オープン直後に実家の生花店が大火災に遭い、宮崎に帰ることになったんです。そこから本当にいろいろありましたが、前向きな夫の姿に救われてきました。
お店の一角にはカフェスペースも。
「炭ラテ」や「アフォガード」も人気
影響力と営業力もすごいなって感じてます。ホークスの関係者だけでなく、ホークスファンも来てくださるし、3歳の頃からファンだったっていうお客様から「プロポーズのお花は絶対、猪本さんにお願いしたかった」って、ご注文をいただいたこともありました。プロポーズとなるとバラの花が108本でしょ。手が大きいので、お花を束ねる“スパイラル”が上手なんです。お客様からも好評なので、プロポーズの花束は夫に任せています。
夫をお花にたとえたら?…ダリアの黒蝶ですね。どっしりしてるけど、心折れる時は後ろからパラパラって崩れる。実は繊細で、お花を扱う時やお客様と話をするときも、繊細だなぁって感じます。崩れても、寝たらすぐに忘れますけどね(笑)。
FLOWER STUDIO S(フラワースタジオエス)
住所:福岡市中央区薬院4丁目2-9シック薬院ビル
電話番号:090-6361-4766
ご注文・お問い合わせメール:info@flowers-s.com
営業時間:11:00~18:00
定休日:木曜日 ※予約注文のみ配達可能
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